ペリレンの電場変調吸収分光

Electro-absorption spectroscopy of Perylene

 

ペリレンは右図のようにπ共役系の分子骨格を持った物質でフラーレン、シアニン色素などと同様に有機非線形光電子材料として研究が行われてきた。また、ペリレンはナノ結晶化することで光学特性が変化することが知られている(右図)。

 

本研究ではこの分子性結晶における量子サイズ効果の解明を目的とし、ポリマー中に分散したペリレン分子、ペリレン微結晶(結晶サイズは300nm〜500nm)に対して電場変調吸収分光測定を行った。

 

電場印加に伴い、ペリレンなどのように対称性をもち永久双極子がない場合、準位間のミキシングのため吸収スペクトルはシフトする(ミキシングを3準位のみでモデル化したものを下に示す)。すなわち変調周波数fに対して2fでロックイン検出した電場変調スペクトルは吸収スペクトルの一次微分形で再現される。

 

実験では左図のように分子分散膜では吸収スペクトルの微分形で現されており、微結晶分散膜ではそれから大きくずれた結果が得られた。結晶化することではじめて観測されるこの吸収変化は、結晶中の隣接分子間の電荷移動吸収による信号だと考えられる。このことと結晶のサイズ効果の解明のため、顕微鏡を用いた単一ナノ結晶での測定を進めている。

 

August, 2004